研究概要 |
カリックスアレーンは芳香環に囲まれたキャビティを持つユニークな分子であるが、カリックスアレーンを配位子とする遷移金属錯体において、その配位構造とキャビティ形状の動的制御に成功した例はほとんどない。本年度の研究では、CiS-ジオキソレニウム錯体cis-(Ph_4P)[ReO_2{ρ-^tBU-calix[4]-(O)_4}](1)およびcis-(Ph_4P)[ReO_2{calix[4]-(O)_4}](2)とアリールヒドラジンとの反応でtrans-(ジアゼニド)(ヒドロキソ)錯体となる際の配位構造変化の反応機構を検討した。 これまでの検討で、1 とArNHNH_2の反応ではtrans-(ジアゼニド)(ヒドロキソ)錯体が直接選択的に生成することが見出されている。これに対して、2 のエタノール溶液にEt_3NとArNHNH_2・HCIを加えて還流した場合にはcis-(ヒドラジド)(オキソ)錯体(Ph_4P)[ReO(mmAr){calix[4]一(O)_4}](3)が収率55-73%で得られることを見出した。同様にPhMeNNH_2を用いた場合にはCiS-(Ph_4P)[ReO(NNPhMe){calix[4]-(O)_4}]が得られ、X線結晶構造解析によってその分子構造を決定できた。3 は塩化メチレンに溶解すると48時間後にtrans-(Ph_4P)-[Re(OH)(NNAr){calix[4]-(O)_4}](4)へとほぼ定量的に異性化した。一方、4(Ar=Ph,C_6H_4C1)は2-プロパノール中に溶解すると再び3へと異性化した。このことから、本異性化は可逆であることがわかった。塩化メチレン中では4が、一方2-プロパノール中では3が安定であることは、より分子が分極している3が極性溶媒中で安定化されることに対応していると考えられる。
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