研究概要 |
ホウ素原子を配位子に含むルイス酸点を持つ配位子(Z型配位子)の金属錯体において,M→Z相互作用に関する直接的な電子状態の知見を得るために,^<197>Auおよび^<193>Irメスバウアー分光法を適用して,M→Z型相互作用を検証することを目的として進めてきている.これまではモノホスファニルボランを配位子とする錯体の研究を進めたが,この配位子自身の安定性が低いことが研究を困難にしていると思われた.そこで23年度は新規ホスファニルボランの分子設計を行い,その合成を検討した. 二つの方針を立てて進めた.第1はボラン部分を安定化して扱いやすい配位子を作ることを目的に,アルキルボランをやめてホウ素部位をエステル化することを検討した。当初の計画ではカテコールあるいはグリコールを予定していたが,金属への配位原子は軟らかい原子がよいと思われたので,アミノフェノールエステルの合成を検討した.第2の検討点として,2座キーレート配位子では,M→B相互作用が弱いときは錯体が十分な安定性を有しないと考え,NBN型の3座配位子である(NH_2C_6H_4O)_2BPhの合成を進めた.PhB(OH)_2とアミノフェノールの脱水あるいは脱プロトン化後のエステル化などを検討したが,思いのほか反応性が悪く,合成できなかった.そこでエステルでなくボラン誘導体(NH_2C_6H_4)_2BPhに方針を変更して,合成を検討し,NH_2C_6H_4Brをリチオ化後にPhBCl_2とカップリングさせることを検討した.反応は進むものの,不純物が多く,まだ錯体を合成するに至っていない.(NH_2C_6H_4)_2BPh合成のための反応条件の最適化を現在進めているところである.
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今後の研究の推進方策 |
今後もボラン配位子とその錯体の合成をすすめるが,加えて次のような研究を計画した.ルイス酸点を持つ配位子としてホウ素系配位子にこだわるのでなく,14~16族元素が超原子価化合物を作るとき,ルイス酸点としてこれらの族の元素はルイス酸点として作用する,このことを考慮して,新規ではあるが,申請者らが過去に経験のある系に,展開することを計画している. また鉄の有機金属錯体の中にFe→EPh_3(E=Al,In,Ga)やFe→EX_3(E=Ga,In)を持つものが知られているので,これらの錯体の^<57>Feメスバウアー分光研究を進める.
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