1.海水の化学的分析-FAB-MSによるシリカの同定 FAB-MSによって東京湾、相模湾のシリカ(ケイ酸)の存在状態をあきらかにした。環状4量体cyclic tetramerと、直鎖4量体linear tetramerのピーク強度比は海水塊の性質を反映して変化を生じる。2002年では、東京湾よりは、相模湾の方が春から夏にかけてlinear tetramerとdimerが摂取されてほとんど存在していなかった。しかし、冷夏(2003年)では、春の時点でも、linear tetramerやdimerが消費されていないことを明らかした。このことから、冷夏を春の時点で予測できる可能性があることがわかった。2003年の秋には、linear tetramerの分布は、2001年と2002年の秋の分布の中間にあった。したがって、珪藻に必要なシリカ化学種は秋にはほぼ補われると考えられる。 2.淡水のシリカの化学種を測定するためのESI-MSによる測定法の確立 淡水におけるシリカ化学種の同定のため、淡水中のシリカの溶存状態を再現する試料の調製を行った。米作物用の肥料を用い、河川に溶解するシリカの溶存状態を再現させることに成功した。このシリカの濃度は2mol/Lが最高であり、河川中のシリカ濃度とも整合性がとれた。このシリカ溶液を得ることによって、FAB-MSで、これまでに得られなかった熱力学的測定結果を得た。加えて、淡水に溶解するシリカ試料を得ることによってESI-MSでの測定が測定しやすくなった。ESI-MSでは、測定における脱水、または水の吸着の過程を明らかにし、分子構造式は明らかにできないが、1分子中のケイ素の数はわかり、シリカ化学種の定量が可能になることがわかった。さらに、シリカの濃度を測定するモリブデン黄法におけるモリブドケイ酸の発色条件についても明らかにした。
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