本研究では、従来の気体試料捕集器具が有していた複数の欠点を同時に克服するとともに、抽出後の試料を一定時間保存可能とする、注射針形状のマイクロ試料前処理デバイスの開発を行うとともに、それらを応用した患者呼気による糖尿病の新規非侵襲診断法の開発を主たる研究目的としている。 初年度である平成21年度は、当初の研究計画に沿って、抽出媒体として用いる各種繊維ならびにその表面被覆処理を中心に検討した。 1)各種合成繊維の性能評価 各種合成細繊維の耐熱性・機械的強度等について評価するとともに、最適耐熱性合成細繊維を決定した。具体的には、単に優れた耐熱性だけでなく、分析装置注入口で想定される高温気体状有機化合物への耐性も考慮し、耐有機溶媒性・耐薬品性を併せ持つ、最適繊維を決定した。 2)繊維充填条件の最適化と被覆液相の比較 上記耐熱性・耐薬品性評価と同時に、通気性を十分に考慮しながら、針デバイスへの細繊維の最適充填条件、あるいは反復使用する際の耐久性等についても検討した。また、細繊維表面に施す被覆の性能比較を行った。更に、液相被覆の化学構造と対象化合物への抽出選択性の関係についても、複数のモデル化合物を用いて系統的に検討した。 3)分子形状認識能を有する高分子媒体の検討 粒子充填針に使用するポリマーベースの抽出媒体の合成ならびに、その抽出性能の評価を行った。抽出媒体として第一選択とする、メタクリル酸/ジメタクリル酸エチレングリコール共重合体を用いて、各種重合添加剤による抽出性能ならびに特性に関する基本的評価を行うとともに、細繊維充填針との相補性についても検討した。
|