本研究では、従来から使用されてきた気体試料捕集器具が有していた複数の欠点を同時に克服するとともに、抽出後の試料を一定時間保存可能とする、注射針形状のマイクロ試料前処理デバイスの開発を行うとともに、それらを応用した患者呼気による糖尿病の新規非侵襲診断法の開発を主たる研究目的としている。 本研究最終年度である平成23年度は、当初の研究計画に沿って、従来手法との比較検討、ならびに絶食条件下での本法の有用性の確認を中心に、詳しく検討した。 1従来の診断法との比較検討 本研究で開発した針型試料前処理デバイスを用いた新規手法と、従来法との比較検討を行うことにより、新規スクリーニング診断法としての有用性を確認した。従来から糖尿病患者の病態診断データとして用いられてきている、尿中ケトン体および血中グリコヘモグロビン率(HbAlc%)の定量結果との十分な相関関係を確認した。 2絶食条件下での本法の有用性確認 前年度までの研究の結果、複数の健常者が絶食して擬似的に糖尿病患者と同様の状態となった場合、試作針型デバイスを用いて呼気中のアセトンならびに尿試料ヘッドスペース中のアセトンを高精度でモニターできることが立証されてきており、また更に、これらの定量プロファイルが、市販の糖尿病簡易検査紙によるデータと良く一致する可能性が高いことが示唆されている。本年度は、これらの実試料に対する研究も含めた総合的な解析を行い、その本法の有用性を確認した。
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