細胞内外の物質収支と電気的中性の原理を念頭において、膜を貫通したイオンチャネルにおけるイオン透過についての新規解析法の構築を試みた。 1.グラミシジンAを含む平面脂質二分子膜を介したイオン透過(白井、窪田(M2)) 二分子で一つのイオンチャネル(孔径約4Å)を形成するグラミシジンA(GA)を平面脂質二分子膜に添加し、GAによるイオンの膜輸送について検討した。少数個のGAチャネルが存在する系で、膜電位印加時の単一チャネル電流の大きさと開確率について統計学的に評価した。GAチャネルはカチオン選択性と言われてきたが、対イオンも同時に逆方向へカチオンの1割程度であるが移動することを明らかにした。カチオンの透過選択性については、チャネル孔より大きなイオンは孔を塞いでしまうため流れにくくなることが分かった。また、GAはキャリアとしても働き、ベースラインの上昇はそれによることを明らかにした。さらに、これらの知見をもとに植物孔辺細胞の気孔開閉に関与するK^+チャネルKAT1の活性評価を試みた。 2.アンホテリシンBを含む平面脂質二分子膜を介したイオンの透過(白井、山内(M1)) アンホテリシンB(AmpB)はステロール類と1:1で結合し、これが複数集まり、平面脂質二分子膜中にイオンチャネルを形成することが知られている。AmpBチャネルはグルコースや塩化物イオンなどを透過することは報告されていたが、本研究により各種有機酸イオンも膜透過することを見出した。このとき、対イオンであるカチオンと同時に逆方向へ有機酸イオンは移動したが、チャネル孔径より小さなイオンの方がより透過しやすいことが判明した。さらに、チャネル孔径より大きなイオンは透過しないことをリポソーム内からのそれらのイオンが移動しないことからも確認した。
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