研究概要 |
物質収支と電気的中性の原理を念頭において、平面脂質二分子膜を介したイオン透過についての新規解析法の構築を試みた。細胞は閉じた系であるので、イオンチャネルが働く膜電位における他のイオン透過(共存カチオンの対向輸送と対アニオンの共輸送)との共役反応は、呼吸・代謝や神経伝達などの細胞機能を構築する上で極めて重要な役割を演じている。チャネルでのイオン透過特性はイオンサイズ(水和イオン)とチャネル孔径の関係だけでは決まらず、透過イオン及び共存イオンのBLM内あるいはチャネル孔内への分配特性の寄与も大きく、両者を考慮した解析が必要であることが判明した。 1.K^+チャネル(KAT1)を含む平面脂質二分子膜を介したイオン透過(協力者:窪田(D2)) 植物孔辺細胞に存在するK+チャネル(KAT1)の活性を調べる目的で、電気化学セルに形成した平面脂質二分子膜・(BLMにKAT1チャネルを再構成して、イオンチャネルによる膜輸送について検討した。共存する薬剤などの影響でチャネル再構成後のBLMは不安定となり、定量的な測定が困難であった。そこで、セル形状を工夫し、BLMを形成するフィルムの孔径を小さくすることで、安定性は向上した。これによって、阻害剤や対イオンの影響を評価できるようになった。 2.チャネル形成剤アンホテリシンBを含む平面脂質二分子膜を介したイオンの透過(協力者:籠橋(B4)) アンホテリシンB(AmB)とステロール類が1:1で結合して、それが複数集まってイオンチャネルを形成することが知られている。BLMを用いた電気化学測定では、膜電位印加に応じて対イオンであるカチオンと同時に逆方向へ有機酸アニオンは移動した。四級アンモニウムイオン及び有機酸アニオンの分子量と透過係数は反比例関係になっており、分子量が250程度以上のイオンは膜内に分配するが透過はできないことが明らかになった。,また、透過不可能な大きなイオンでも対イオンは移動すること、対イオンが疎水的であるほど透過電流が上昇することも明らかにした。 本研究で構築した解析法により、チャネルによるイオン透過についてより定量的な解析が行えるものと期待している。
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