研究概要 |
動電加給前濃縮により高感度化を行うためには、試料バイアルにおける試料導入時の電場を拡大し、効率よく試料を導入する必要がある。単に電極とキャピラリー末端を離しただけでもある程度の効果が認められるが、電気は最短距離を流れるため、導入量はすぐに頭打ちしてしまう。そこで、H21年度はEKS前濃縮に用いる電極の構造および試料バイアルの構造と導入量の関係を、シミュレーションおよび実験により検討した。用いたソフトウエアはCFD-ACE+(CFD-RC, USA)と呼ばれるシミュレーションソフトウエアで、電気泳動と液体の流れなど物質移送に関する複数の物理要素を3次元空間において時系列で解くものである。 (1) 電極一体型リザーバーの設計製作:上記のシミュレーション結果に基づき、10~20mL程度の容量の金属製(Al, Cu)リザーバー(外壁が電極)を作成し、実験的に試料導入効率を評価した。その結果、Cu製のバイアルは十分実用になることが明らかになった。ただし、極微量の金属イオンの漏れ出しがあるので、ppbレベル以下の分離には使用しにくい。また、容量を大きくするため直径方向を増加させるよりは、むしろ縦長の構造とする方が試料の効率よい導入が可能であることが明らかになった。 (2) キャピラリー電気泳動装置の改造:作製したリザーバーを装着可能とするため、試料バイアル電極の接触面に安全に電極を接触させるよう注意し、CE装置に小規模な改造を施し、評価実験を行った。 (3) 現時点での結論:各種の試料導入部を検討した結果、現在では体積約1mL長さ50mm程度の非伝導性バイアル(PP製)に試料900μL程度を入れて使用する方法が、最も簡便であり、サブppbレベルの分析が可能であることを明らかにした。ただ、高感度であるが故に大気からの汚染対策が望まれ、次年度以降の課題としたい。
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