研究概要 |
動電加給前濃(EKS)により高感度化を行うためには、試料バイアルにおける試料導入時の電場を拡大し、効率よく試料を導入する必要がある。このため、シミュレーション(CFD-ACE+, CFD-RC, USA)による検討を重ねながら、電極一体型リザーバーの作製や、それに伴うキャピラリー電気泳動装置の改造などを行ってきた。今年度はさらに種々の形状を検討したが、試料液を細長いバイアル(直径約6mm、長さ約50mm、容積約1mL)に充填し,可能な限り広範囲に電場を印加できるよう、短縮した電極をセットし、EKSに適した電解液を使用することにより,十分な濃縮性能を得ることができた。得られたLODは希土類元素で0.04nM(イットリウムで3.6ppt、エルビウムで6.7ppt)濃縮率は約8万倍を達成した。さらに大容量の試料容器(25mL)を用いて、17mLの試料に対して試験を行ったところ,リング電極を用い同時に試料溶液を緩やかに攪拌することにより,LODは6pM(エルビウムで1ppt)濃縮率は約50万倍を達成した。これらはいずれもUV吸収法を用いたCE分析法として世界最高レベルである。一方本年度は、EKSによるとなぜこのような高度の濃縮が可能であるか,シミュレーションにより詳細に検討した。その結果,低濃度の試料のEKSにおいては、等速電気泳動的前濃縮に必要な、ターミナルゾーン(他のゾーンより電位勾配が高いゾーン)が、自動的に生成し、このゾーンの存在が高度の濃縮に極めて重要な役割を果たしていることを見出した。これらの詳細はすでに論文として公表済みである。現在,アニオンについても高感度化を進めている。アニオン分析についてはカチオン以上に大気からの電解液や水の汚染の影響が顕著であり、解決すべき難題である。
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