金や銀などをガラス基板上に蒸着した薄膜を作用電極とする電気化学セルを作成し、平成21年度に購入した電気化学測定システム(北斗電工、HZ-5000)と組み合わせてストリッピングボルタンメトリーを実現した。Mnの2価、4価の酸化・還元電位近傍に濃縮電位を設定することでMnイオンを選択的に濃縮し、その後の電位走査時に脱利に伴うストリッピング電流を観察した。微量元素分析としての性能評価に加えて、濃縮時間に対する溶出量(ストリッピング電流)の依存性を調べ、目的とする作用電極周辺への濃縮効果を確認した。 最終的な目的は広島大放射光センターからの放射光を用いて電極および電極表面の反応生成物についてXAFS測定を行うことであり、作用電極背面からX線を入射し、電極表面に濃縮した化学種(元素)からの蛍光X線を測定する計画である。従って、電極の薄膜化やX線に対する吸収の少ない材質について検討を進めた。ポリプロピレン膜上にCr、Agを積層(蒸着)した作用電極を作成し、X線照射用セルの試作を行った。本年度は電極近傍への濃縮効果の有無を蛍光X線信号強度の変化として観測することを目的として、作用電極への電位設定および蛍光X線測定を自動化するためのソフトウエアを開発した。実験の容易さから硬X線を励起に用い、濃縮による電極近傍のMn濃度の変化を調べたが、入射X線(17.4keV)の進入深さが500ミクロンを超えているために、濃縮効果を有為に観測することはできなかった。
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