有機薄膜上に形成したAu膜を作用電極に用いる電気化学セルを開発し、封入X線管とモノクロメーターを組み合わせて単色化したX線を背面照射する配置で電極表面の蛍光X線測定を実現した。開発したX線照射用電気化学セルを用いてCuめっき膜のその場観察を行い、酸化条件下でのストリップ時の電気量から算出されるCu膜厚を蛍光X線検出により評価した膜厚と比較し、良好な結果を得た。封入型X線源を光源に用いる場合の検出限界はCu膜厚にして0.3nm程度であり、作用電極の面積をビームサイズ程度にすることで、20ng程度のCuを検出することができる。電極表面に特定元素を濃縮する手法は電気化学的に既に用いられており、適切な電位を選択することで、溶液中の妨害元素の影響を除く効果が期待できる。電気化学的な検出では元素の同定には同種元素の標準添加法が用いられるが、蛍光X線検出は帰属が容易な点で有利である。さらに本装置と放射光を用いる蛍光XAFS測定と組み合わせることで、電極表面の単層膜レベルの生成物について化学状態に関する知見を得ることできる。平成23年度には放射光を用いてXAFS測定を行う予定であるが、Cuの電気化学的な酸化・還元に関係して、1電子酸化により表面に形成されると報告されている化学種(CuClなど)の検出や、還元電位以下での析出(under potential deposition)などの現象を追跡する予定である。
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