有機薄膜上に真空蒸着した金や白金の薄膜を作用電極に用いる電気化学セルを開発し、封入X線管とモノクロメーターを組み合わせて単色化したX線を背面照射する配置で電極表面の蛍光X線測定を実現した。また市販のポテンシオ・ガルバノスタットの外部制御端子を用いて、作用電極の電位をPCから外部制御し、作用電極の電位を変えながら蛍光X線測定を行うことができるシステムを構築した。このシステムを用いて、作用電極上に銅めっきおよび銅めっき膜のストリップを行う電位を印加しながら電流の時間変化を計測し、同時に蛍光X線スペクトル測定を行った。 平成23年度は塩化物イオンおよび臭化物イオンの共存下での銅めっき膜のストリップ挙動の違いを調べた。ストリップ時の電気量から算出した銅膜厚が蛍光X線測定により求めた膜厚と対応していることは平成22年度に確認しているが、めっき後に適当な電位を作用電極に印加しながらハロゲンイオンと反応させることで銅膜厚は一定に保ったまま反応時間を制御できることを確認した。ハロゲンイオン存在下で銅めっき膜の反応を行い、ストリップ時に作用電極に流れる電流の時間依存性を調べた。銅膜厚に対応する電気量は保存しているが、ハロゲンイオンの共存下ではストリップに要する時間が長くなる傾向が観測された。これは銅膜上へのハロゲンイオンの吸着に対応していると考えられる。臭化物イオンの共存下で蛍光X線測定を行ったところ、実際に臭素の蛍光X線強度の増大が確認され、電極上または電極近傍への臭化物イオンの濃縮を確認することができた。さらに、作用電極の電位を保持電位付近で変調することで、めっき膜の溶解、析出(めっき)を繰り返し行い、作用電極での電流の挙動がハロゲンイオンの有無により大きく変化することを明らかにした。
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