研究概要 |
本研究では,ガスの新規な捕集デバイスの開発を行い,これをもとにガス成分測定のアプリケーションを開発し,さらには大気中化学物質の動態の解析をすすめていくという広範な内容である。23年度はガス捕集デバイスの評価法の開発を完成し,これまで開発したデバイスのアンモニアや硫化水素に対する評価を行った。さらに本成果を固相のガス吸着特性の解析にまで展開した。ガス吸着剤については,これまで吸着剤を充填したカラムの評価は行えたが,本法により吸着剤自身のガス吸着特性の数値化が可能になった。吸着カラムのパッケージとしての評価ではなく素材自身を評価するパラメータを提唱した。 さらに,メチルメルカプタンやジメチルスルフィドなどのような,これまで測定が困難であった化合物への応用展開をはかった。特にメチルメルカプタンは,その反応性や吸着性から,ラボへ持ち帰ってからの測定が不可能であったが,今回オンサイトでppbレベルの連続分析に世界で初めて成功した。ジメチルスルフィドについては,化学発光で測定するシステムを構築した。これにより天然水中に溶存する超微量のDMSの測定が可能になった。 ホルムアルデヒドも,これまで低濃度の測定は困難であったが,本法により微量の連続分析が可能になった。低濃度の分析については,オゾンの妨害などいくつか問題が発覚したが,それぞれ対応することができた。また妨害のメカニズムについてもラボ実験や質量分析結果をもとに明らかにすることができた。これらはJ.Environ.Monit.(RSC)に投稿中である。さらに,エアロゾルとガス状のホルムアルデヒドについてそれぞれ分けて測定できるシステムを構築した。本法により,エアロゾル中に存在するホルムアルデヒドのモニタリングを初めて行うことができた。エアロゾルは様々な反応の場になっており,大気化学を解析する上で重要な知見を得た。本件についてはさらにデータを蓄積していきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ガス捕集デバイスの評価方法を新たに開発した。これは気液接触面における気体分子の取り込みやすさを「シンク効率」として定義したものである。このシンク効率は,固相のガス吸着にも応用が可能で,吸着剤自身の表面の評価や吸着剤の寿命や性能の評価に応用展開することができる。 さらに本デバイスを用いた大気環境解析をすすめることができ,有用な知見を多く得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロガス分析システムについて,ガス捕集や検出などの要素技術開発を進めてきた。ほぼ確立できたので,今後,このシステムの応用展開をさらにはかり,システムの汎用性の確保とともに,大気化学への応用などnatural scienceへの貢献も図っていきたいと考えている。
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