研究概要 |
当初の計画に従い、平成22年度ではターゲットとする先天性胆汁酸代謝異常症患者尿中に存在が予測された一連の異常胆汁酸多重抱合体の標品並びに至適内部標準物質の化学合成を行なった。本年度では特に胆汁うっ滞症を対象とした。胆汁うっ滞症時には胆汁酸輸送タンパク質(BSEP)が正常に機能しなくなり、生体内の胆汁酸濃度が増加することが知られている。しかし最近、胆汁うっ滞症時に3α,6α,7α,12α-Tetrahydoroxy-5β-cholan-24-oic acid(6α-OH-CA)がmultidrug resistance-associated protein 2(mMRP2)によって特異的に尿中へ排出されることが明らかになったものの、その代謝機構についてはいまだ明らかになっていない。そこで6α-OH-CAの代謝機構を明らかにするためにトリチウムラベル化した6α-OH-CAをトレーサーとして用いることが至適であると考えられた。本年度は入手可能なコール酸から6α-OH-CAへと導き、さらにその側鎖にウィッティッヒ反応を利用してΔ^<22>結合を導入することでトレーサー前駆物質である3α,6α,7α,12α-Tetrahydoroxy-5β-chol-22-en-24-oic acid(6α-OH-Δ^<22>-CA)及びそのグリシン、タウリン抱合体を化学合成した。本研究成果はChem.Pharm.Bull.誌に報告した[58(8),1103-1106(2010)]。引き続き、平成23年度中に、得られたトレーサーを用いて6α-OH-CAのmMRP2による代謝機構について検討していく予定である。また、生体試料の分析検体数を増やして各種先天性胆汁酸代謝異常症疾患の化学診断法の開発も行っていく予定である。
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