研究課題
胆汁酸は、肝においてコレステロールより生合成され、腸管において脂質の吸収促進などの役割を担う。胆汁酸の生合成や動態は種々の核内受容体により制御されているため、通常胆汁酸は、血中や尿中にはごくわずかにしか存在しない。しかしながら、各種代謝性疾患や胆汁欝滞を伴う新生児疾患では、胆汁酸の生合成に関連する酵素の活性が低下するため、中間体が蓄積するとともに、硫酸抱合体をはじめとする抱合型胆汁酸が尿中に多量に排泄されることが報告されている。このような背景から、尿中に増加する抱合型胆汁酸のみを包括的に解析することができれば、それらの疾患の早期診断に役立つ可能性があるものと考えられた。計画最終年となる当該年度では、生体内3β-OH-Δ^5ステロイド多重抱合体の体内動態を把握するため、生体試料(尿、血清、胆汁など)からの至適な固相抽出条件、同時再現性、添加回収率、希釈直線性、共存物質の影響などを精査した。次いで、分析検体数を増やして疾病と3β-OH-Δ^5ステロイド異常代謝成分との構造相関を明らかにし、各疾病に適切な診断指標化合物として数種を特定し、マーカー物質として推定した。以上のような一連のプロセスを経て、最終的な疾患者の生体試料についてのプロフィル分析法を確立し、3β-HSD/HSI欠損症のうち、特に3β一hydroxysteroid dehydrogenase欠損症及びNiemann-Pick type-C疾患の確定化学診断法と相互鑑別法並びに病態解析を行なった。また、各種抱合型胆汁酸の標品を用いて、効率的にプロダクトイオンを生成する低エネルギーCID条件を精査すると共に、代謝性疾患患者の尿を用いて、プリカーサーイオンスキャンやニュートラルロススキャンを活用する抱合型胆汁酸のフォーカシング法の構築を試みた。
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