研究概要 |
医薬品の開発過程において有効なスクリーニング系の確立は不可欠であり、特にin vitroでのスクリーニング系として簡便、廉価な方法が望まれる。ここ数年、核磁気共鳴(NMR)法の薬剤スクリーニングへの応用が試みられており、新規なスクリーニング法として、製薬会社などで注目されている。現在までにSTD, NOEポンピング法など数種類の測定法が提案されているが,サンプル依存性が高く,汎用性のある測定法がないのが現状である.この現状を踏まえ、軽水溶液(90%H_2O,10%D_2O)において測定可能な、高精度なNMR測定法の開発を目指した。 レセプター-リガンド複合体のモデルシステムとして、リゾチーム-グルコースおよびヒト血清アルブミン-トリプトファンを使用した。STD法およびWater-LOGSY法は他の方法と比較して、高親和性のリガンドに対しても応用可能と報告されていることより、これら2つのパルスシーケンスをベースに、高感度測定法の開発を行った。 (1)Water-LOGSY法の開発:WATERGATE-W5シーケンスを最初に使用し、水の磁化を選択的に残した。次に、水の磁化を複合体に移動させ、最終的に低分子であるリガンド(グルコースまたはトリプトファン)シグナルを検出した。 (2)STD法の開発:WETシーケンスを取り入れて、不要な水シグナルを選択的に消去し、直後にタンパク質のメチル領域を選択照射した。この手法により、タンパク質の磁化をリガンドに移して、リガンドシグナルを選択的に検出することに成功した。 上記の2つの方法は共に、軽水溶媒(90%H_2O,10%D_2O)においても有効であることが判明し、特にSTD法はWETシーケンスの導入により、水近傍のリガンドシグナルの観測も可能になった。
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