研究概要 |
医薬品の開発過程において有効なスクリーニング系の確立は不可欠であり、特にin vitroでのスクリーニング系として簡便、廉価な方法が望まれる。ここ数年、核磁気共鳴(NMR)法の薬剤スクリーニングへの応用が、製薬会社などで試みられており、分光学的なスクリーニング法として注目されている。現在までにSTD,NOEポンピング法など数種類の測定法が提案されているが,サンプル依存性が高く,汎用性に欠ける短所がある。本研究課題では、軽水溶液において測定可能な信頼度の高いNMR測定法の開発を目指した。STD法およびWater-LOGSY法は、高親和性のリガンドに対しても適用可能との報告がこれまでにあり、これら2つの測定法をベースに高感度化・高精度化を目標とした。 リガンドレーセプター複合体のモデルシステムとして、リゾチーム-グルコースおよびヒト血清アルブミン-トリプトファンを使用した。STD法では、タンパク質シグナルを選択照射し、その磁化を結合しているリガンドに移して検出する。軽水溶液の場合、ほとんどの1Hが水分子由来であるので、これをできる限り選択的に消去する必要がある。この手法として、WATERGATEおよびZ-filterを使用し検討したところ、Z-filterを2回繰り返して使用したパルスシーケンスが最も水シグナルの消去が効果的であった。 開発途中で生じた問題点として、タンパク質の消え残りのシグナルが挙げられる。特に、リゾチーム-グルコース複合体において顕著であった。これはリゾチームの分子量がヒト血清アルブミンの約25%程度と小さいためと考えられる。そこで、T2-filterをFID信号の取り込み直前に導入し、タンパク質シグナルの軽減を行った。
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