研究概要 |
環境中におけるひ素は様々な化学形態で存在し,毒性はその化学形態に依存するため,精確な形態別分析が重要となる.これまで総量ひ素を分析するには原子スペクトル分析法が主であったが,その際,化学形態によって分析時の定量感度が異なる可能性などが懸念されている.本件では,これまでに高純度のひ素化合物試薬を純度評価し,さらにその調製溶液中のひ素濃度をSIトレーサブルな分析を行うことで,化学形態に依存する分析感度差などを検討してきた.そして,化合物濃度を厳密に決定した基準液を用いて,実試料への適用と,より厳密な化学形態に依存する分析感度挙動について検討を行った 1.無機ひ素化合物であるAs(III)およびAs(V)において,ICPプラズマ分析の際に観測される分析感度差を検討した.この現象については,既にIMF効果が関与していることを明確にしているが,さらに詳細な条件と挙動を検討することで,IFM効果が起こる原因を特定した.また,実験中にさらなる要因箇所を発見し,その現象を明確にした.そしてAs(III)とAs(V)の分析感度差を引き起こす要因は,試料導入部とICPプラズマ内の大きな2つの要因に大別されることを明らかにした.また,ひ素と同様に2つの酸化数を有するセレンについても検討を行い,セレンでは同様な効果が起こらないことを確認した.2.リスク評価を正しく行うには,前処理を含めた妥当性の確認が必要である.本件では,我が国の主要農産物であり主食となる米について,前処理法を含むひ素化合物の分析法の確立を行った.また,分析において精確分析を行うためには,一次標準測定法となる同位体希釈分析が重要となる.そこで,濃度決定したDMAA溶液を基準に同位体ラベル化したDMAA濃度を決定し,同位体希釈ICP-MSを実試料へ適用した.
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