本年度は分子間カチオンーπ相互作用を利用するジエン類の光二量化および、クマリン類とビニルピリジンとの[2+2]付加環化反応を検討した。 ジエン類の光二量化反応は、二重結合間の反応位置の違いによる異性体およびsyn体とanti体の異性体混合物を与えるため、一般に複数の生成物を与える。本研究では、塩酸存在下、450W高圧水銀ランプを用いて6時間光照射を行ったところ、synHT型二量体を高い選択性で40%の単離収率で与えることを見出した。一方、塩酸の非存在下では複雑な生成物を与え、二量体を単離することはできなかった。このような酸の効果は、塩酸存在下カチオンーπ相互作用により分子配向がhead-to-tailに制御された結果であると考えられる。 クマリン類とビニルピリジンとの[2+2]付加環化反応において、塩酸の有無による生成物の違いを検討した。450W高圧水銀ランプで光照射を行ったところ、塩酸の非存在下ではsyn/antiの比率が4/6であったのに対し、塩酸存在下では6/4に変化した。このようなsyn体の増加は、塩酸を加えた場合、クマリンのベンゼン環とのカチオンーπ相互作用により重なり型の配向を取り、本会合体から[2+2]付加反応が進行したためsyn体の比率が増加したものと考えられる。
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