研究概要 |
本年度は当初計画の2点に1点を追加して検討を行い、所期の目的を達成した。 1.芳香環への三置換アリル基の立体特異的導入法の開拓 イソプレノイドクロマン骨格を構築する上でフェノールへの三置換アリル基の導入は必須の合成ステップである。当初第3級アリルエーテルのClaisen転位を用いたが、反応の立体選択性が十分でなく、生成した立体異性体の分離も極めて困難であった。そこで、先ずハロ基を導入し、Mg化合物によってハロゲン-メタル交換を行ない、アリル型ハロゲン化物とカップリングを行なう方法を考案して実験したところ、目的のアリル基を立体特異的に導入することに成功した。一部の官能基は保護する必要があるが、エステル基は反応に支障がないことを確認した。 2.Stachybotrin類の共通合成中間体の合成法検討 当初3,5-ジヒドロキシ安息香酸誘導体から、イソインドール環構築、Claisen転位による不飽和炭素鎖導入、ピラン前駆体の構築に成功したが、上記検討の結果を応用し、イソインドール環構築の後、カップリング反応により炭素鎖の導入に成功した。引き続く環化反応について検討したところ、各種反応条件を用いても目的どおりのクロマン骨格の構築は不可能であった.そこで骨格構築の順序を変更することとし、3,5-ジヒドロキシ安息香酸誘導体からクロマン骨格の構築に成功した。引く続いてラクタム環を構築する合成経路について検討した結果、目標とする共通合成中間体の創製に成功した。 3.クロマン骨格構築法の検討 上記の環化反応では環化の方向性が問題となった。そこで環化前駆体のエポキシドに不飽和基を導入してクロマン構築を優先させることを計画して検討を行ったが、目的の不飽和アリル基反応を導入する反応が極めて低収率のため、環化反応の十分な検討が果たせなかった。
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