研究概要 |
我々は、これまでにPb(II)触媒を用いるカスケード型連続環化反応によるスピロケタール合成法の開発を行って来た。今回、この合成法を発展させジヒドロキシケトンを用いた遠隔立体化学制御を含む多不斉中心の一段階制御法を開発した。また近年、スピロケタール構造を有する化合物が数多く単離構造決定され、その中には有用な生理活性を有するものも数多く存在し、その特異な構造から絶好の合成ターゲットとなっている。今回、スピロケタール構造を有する、スピロファンジンA、ビストラミドAの合成研究を行った。更に、この環化反応を応用し非天然型糖類の合成を検討した。また、これらの反応の基礎となるPb(II)触媒を用いた環化反応における立体選択性について詳細に検討を行った。 1,スピロファンジンAの合成 スピロファンジンAの8位メチル基以外の全セグメントの合成に成功した。懸案の右側鎖部導入の足掛かりとなる中央セグメント部分のジブロモオレフィン化をHMTPを用いたCorey-Fuch反応により達成した。 2,ビストラミドAの合成 左側鎖部の導入を有機銅試薬を用いたS_N2'型の反応を用いて導入可能であることを見出した。 3,非天然型糖の合成 アルデヒドから生成するヘミアセタール中間体を経由してパラジウム触媒を用いたアセタール環化反応を行い、非天然型糖であるdeoxy-L-riboseの合成を行った。Z-体を用いた場合は、5員環よりも7員環が主生成物なった。 4,連続的環化反応によるスピロケタール骨格の不斉合成 これまでパラジウム触媒を用いたスピトケタール骨格の立体選択的合成法の開発を行ってきたが、不斉環化反応には成功していなかった。そこでイリジウム触媒を用いた環化反応を検討したところ、極めて高いエナンチオ選択性で環化反応が進行することが明らかとなった。
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