研究概要 |
メソ形ジオールの不斉非対称化反応あるいは光学分割反応は,多官能キラル基本原料を供給する重要な方法論であり近年活発な研究がなされている.当研究室においても,同族原子である窒素,リンの塩基性の差異に着目した多点制御型不斉有機触媒の開発を精力的に推進しており,これまでキナアルカロイドのホスフィニト誘導体が優れた触媒活性を有することを明らかとしている.しかしながら本触媒は,空気中で酸化されやすいため取り扱いが比較的困難であること,また30mol%以上の触媒量が通常必要であること,更に触媒の両鏡像異性体が入手できないといった解決すべき問題点があった.本研究は,これらの問題点を克服するため新たなキラルアミノホスフィニト触媒の探索とその触媒活性の評価を目的として行った.いくつかのキラルアミノアルコールを原料とするホスフィニト誘導体を合成しその触媒活性を評価したところ,cis-アミノインダノールのホスフィニト誘導体が,1,2-及び1,3-ジオールの不斉非対称化反応において極めて有効な触媒であることを見出した.本触媒は,両鏡像異性体が商業的に入手可能なアミノインダノールより2段階で調製でき,更にキナアルカロイドのホスフィニト誘導体よりも安定でアルミナゲルを用いたカラムクロマトグラフィーによる精製が可能であった.また,密封した容器中冷暗所で3ヶ月以上触媒活性を失うことなく安定に保管できることも確認できた.アミノ基上の置換基効果あるいは反応条件を検討したところ,N,N-ジメチル体のホスフィニトが最適であり,1,2-ジオールの非対称化反応においては最高95%eeで,またこれまで困難であった非環式1,3-ジオールの非対称化反応においても最高67%eeの選択性で不斉非対称化反応が実現できることを見出した.21年度に得られた上記成果について,現在投稿のための準備を行っている.
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