研究概要 |
本研究では、イリジウム錯体触媒の新規な触媒機能開発を目的として、1.非対称α,ω-ジインとニトリルの位置選択的交差付加環化反応、2.オリゴヘテロアレーンの高効率合成、3.α,ω-ジインとイソシアナートの交差付加環化反応、4.ベンジルエステルとケテンシリルアセタール、シリルエノールエーテルとの反応を検討した。. 1.アルキン末端上に異なる置換基を有するマロン酸エステル由来の非対称ジイン及びリンカー部位にエステル結合を有する非対称ジインとニトリルとの交差付加環化反応を[Ir(cod)Cl]_2/BINAP触媒を用いて行った。いずれの反応も位置選択的に進行し、単一のピリジン生成物が得られた。これらの位置選択性は電子的効果によって説明できる。 2.2,6-Dicyanopyridineとアルキン末端上にメチル基と2-pyridiyl基を有するマロン酸エステル由来の非対称ジインの位置選択的付加によりquinquepyridineを収率86%で得た。5つのピリジン環を一回の反応操作で連結することができた。オリゴヘテロアレーンの高効率合成法を開発した。 3.[Ir(cod)C]_2/BINAP触媒によりα,ω-ジインとイソシアナートの交差付加環化反応が進行し、2-pyridoneが高収率で得られることを見出した。非対称ジインとイソシアナートとの反応は位置選択的に進行し、単一の生成物が得られた。オルト置換芳香族イソシアナートとの反応では、軸不斉を有する2-pyridoneが最高94%eeで得られた。 4.[Ir(cod)Cl]_2/NaBARF/P(OPh)_3触媒系により、酢酸ベンジルとケテンシリルアセタールの反応が良好に進行し、ベンジル化した生成物が定量的に得られた。系中で生成したカチオン性イリジウム錯体が、ルイス酸触媒として機能し、ベンジルカチオンを発生させ、ケテンシリルアセタールとの反応が進行するものと考えられる。
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