研究概要 |
二糖において、各々の糖残基から1つずつ選んだ水酸基間で分子内脱水した無水糖の合成を計画した。まず、このような環状構造がつくれそうな二糖を探索するために、Gaussian03ソフトウェアを用いて分子の立体構造をシミュレーションした。その結果、入手が容易なものではセロビオースが候補となった。セロビオースの全ての水酸基をアセチル化し、Koenigs-Knorr法に従い炭酸銀を活性化剤として1位をメトキシル化した後、ナトリウムメトキシドでアセチル基を完全除去した。これを合成したのは、最終的にセロビオースの1位と4'位の水酸基を除いて残りの水酸基には全てベンジル基を導入したいこと、および、経由する各誘導体の構造解析を行い易くするために、アノマー炭素の立体配置を固定したいためである。続いて、4'位と6'位の水酸基をベンジリデン化し、残った5つの水酸基を全てベンジル化した。各工程では、クロマトグラフィーや再結晶による精製を繰り返し、全ての生成物においてMRスペクトルで構造を確認している。ベンジリデン基を規程の方法で選択的に開裂し、4'位のみが水酸基のセロビオース誘導体を得た。これを、ジオキサン中でp-トルエンスルホン酸を触媒に用い、脱メチル化と同時に環化を試みた。温度および酸や基質の濃度を変えることにより環化物の生成量を詳細に調べた。最適条件について、次年度以降、さらに検討をする。 一方、この無水糖の重合挙動を予想するために、他の無水糖の開環重合性について調べた。水酸基をベンジル基で保護した1,6-無水タロースを合成し、その重合性を他の無水糖と比較した結果、3位の水酸基の立体配置が重合に大きな影響を及ぼすという重要な知見を得た。
|