研究概要 |
人体を含めた生体物質を対象としたin Vitro MRIにおいては,医療診断として用いられることが多いため,形態的情報の取得を特に重視し,分解能の向上とともに,画像のコントラストのつけ方として,T_1強調画像,T_2強調画像という言葉が示すような定性的な測定法が主流となっている.一方,高分子生体材料などへのMRI法の応用を考えると単なる形態的情報だけでなく,物性との関連づけの面から,分子レベルの構造および分子運動性の材料全体における空間分布を定性的な議論だけに終わらせず,定量的に評価する手法の確立の必要がある.そこで,本研究では高分子生体材料を対象にMRI法により得られる形態的空間情報にNMR分光から得られる高分子生体材料中の分子レベルの構造や運動性の違いを付加することにより定量的に評価する方法を開発する. 本年度はこのMRI法をリチウムイオン2次電池中の対イオン分布の可視化に適用し,充放電過程における対イオンの分布とリチウムイオン2次電池の劣化機構の解明に用いた.その結果,充放電実験前と,充放電実験を繰り返すことにより劣化した後では,電解質中の対イオンの分布におおきな違いが見られた.特に,劣化後において,正極表面への対イオンが偏析は見られたが,それは正極表面に均一に偏析しているのではなく,特定部位に集中して偏析が発生していることがわかった.この対イオンの正極表面近傍への不均一な偏析がこのリチウムイオン二次電池の性能劣化に大きく関与していることが示唆された.
|