研究概要 |
人体を含めた生体物質を対象としたin Vitro MRIにおいては,医療診断として用いられることが多いため,形態的情報の取得を特に重視し,分解能の向上とともに,画像のコントラストのつけ方として, T_1強調画像, T_2強調画像という言葉が示すような定性的な測定法が主流となっている.一方,高分子生体材料などへのMRI法の応用を考えると単なる形態的情報だけでなく,物性との関連づけの面から,分子レベルの構造および分子運動性の材料全体における空間分布を定性的な議論だけに終わらせず,定量的に評価する手法の確立の必要がある.そこで,本研究では高分子生体材料を対象にMRI法により得られる形態的空間情報にNMR分光から得られる高分子生体材料中の分子レベルの構造や運動性の違いを付加することにより定量的に評価する方法を開発する.本研究で確立したMRI法をシルク基盤の小口径人工血管中の水分子の運動性解析に応用した.具体的には,シルク基盤にシルクおよびポリウレタンをコーティングし,コーティング材の異なる人工血管を作製した.これらの人工血管のMRI画像から,コーティング剤の違いが人工血管中の水分子の緩和時間T2や拡散係数Dの空間分布が大きく影響することがわかった.本研究で開発した定量的MRI解析技術により,生体用材料中の局所的な水分子の緩和時間や拡散係数Dを求めることができ,それらの情報から局所的な運動モード(回転,並進)の違いを議論することができた.
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