研究概要 |
主鎖に芳香環や複素環等のパイ共役系を有する単位から成る高分子について、研究を行った。そして、これらのパイ共役系を有する高分子の合成には、ニッケル錯体やパラジウム錯体等を用いる有機金属重縮合の方法を主に用いた。論文への発表としては、主鎖に大きなパイ共役系を持ち、H+や金属イオンと電子相互作用することのできる1,8-ナフチリジンを構成単位とする新規パイ共役高分子を合成して、化学構造解析を行い、物性評価、化学反応性の解明を行った結果を報告した。物性については、紫外・可視吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定とcyclicvoltammetryによりHOMOレベル、LUMOレベルの解析を行い、1,8-ナフチリジンがパイ共役高分子中において電子受容性の大きな単位として機能することを明らかにした。また、このパイ共役高分子が1,8-ナフチリジンのNを通してプロトンや金属イオンと結合した場合に、プロトンや金属イオンが主鎖パイ共役系と電子相互作用を行うことにより、このパイ共役高分子の光学的性質にどのような影響を与えるかを紫外・可視スペクトル及び蛍光スペクトルの測定により解明した。さらに、9,10-ジヒドロフェナントレンを構成単位とする多様なパイ共役高分子の合成、化学構造解析、物性評価の結果を報告した。この9,10-ジヒドロフェナントレンを構成単位とするパイ共役高分子の中には、非共有電子対を持つアルコキシ基を側鎖に有する高分子も含まれている。得られたパイ共役高分子について、光学的性質の解明、X線回折法による分子集合状態の解明と側鎖が分子会合に及ぼす影響の解明、及びcyclicvoltammetryによる電気化学的応答の解析等を行った。また、パイ共役高分子の合成法について、反応系の検討を行った。
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