研究概要 |
平成21年度は,擬ロタキサン型蛍光プローブの高性能化を図る目的で,すでにその有用性が明らかになっているスチリルピリジニウム(SP)色素とフェニルボロン酸修飾β-シクロデキストリン(PBCD)との系とベンゾクラウン(CR)誘導体とピレン修飾α-シクロデキストリン(PyαCD)の系の改良について検討を行った. まず,SP-PBCD超分子系については,SP色素を二残基持つ軸(SP_2)とPBCDとの超分子系が,通常のボロン酸誘導体とは異なりガラクトース選択性を示すこと,またグリコシド糖にも有意な応答を示すことを見いだした.さらにSP_2のSP残基同士を繋いでいるアルキル鎖にアミド結合を導入した軸は,応答は小さいもののグルコースに対する高い選択性を示すことも見いだし,SP-PBCD系の有用性をさらに高めることに成功した. CR-PyaCD超分子系の検討においては,CR誘導体のアルキル鎖の末端に種々の官能基を導入した軸を使った場合,蛍光応答は減弱するものの,末端がメチルの場合と同様の蛍光応答が観察された.この結果を基に,末端に導入した官能基を足掛かりに擬ロタキサンからロタキサンへの変換反応を試みた.収率は非常に低いながらも,ストッパーが導入されたロタキサンを得ることに成功した.得られたロタキサンの蛍光応答を現在解析中である. 多糖検出系の展開としてSP色素オリゴマーの合成を検討し,ごく低収率ながらも合成できたが,PBCDとの蛍光挙動を検討できる量は確保できなかったため,現在合成経路の再検討を行っているところである.
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