研究概要 |
平成22年度は,前年度に引き続き,擬ロタキサン型蛍光プローブの高性能化を図る目的で,スチリルピリジニウム(SP)色素とフェニルボロン酸修飾β-シクロデキストリン(PBCD)との系とベンゾクラウン(CR)誘導体とピレン修飾α-シクロデキストリン(PyαCD)の系の改良について検討を行った. まず,SP-PBCD超分子系については,前年度にグリコシド糖への高い応答を得たことを進展させ,ガラクトシドに対し特に高い応答を示す系を見いだし,その結果を日本薬学会第131年会で公表した.また,擬ロタキサンの軸として,種々の官能基を含めた二官能性SP色素を合成し,PBCDとの超分子系の糖に対する蛍光応答を精査した.蛍光強度とグルコース選択性を併せ持つ特性をもつSP-PBCD超分子系はなかったが,どちらかの特性をもつ超分子系は得られているので,次年度の検討課題となる. CR-PyaCD超分子系の検討においては,前年度からの継続で,擬ロタキサン型のCR-PyaCDのロタキサンへの変換を試みた.種々のカップリング反応を検討した結果,末端にアジド基を導入した系でのロタキサン変換効率が低いながらも単離できるレベルで得られた.しかしながら,この超分子系はアルカリ金属イオンに対する有意な蛍光応答が得られなかった.その原因はほぼ解明できているので,次年度ではそれを足掛かりとして,新たなロタキサン型CR-PyaCD超分子系を模索する. また,高分子多糖に対する応答を実現するために,SP色素のオリゴマーを試みた.低収率ではあるが,SP色素の4量体が得られ,水中でのPBCDとの擬ロタキサン形成が確認できた。次年度ではこの系を用い,多糖の蛍光応答を検討する予定である.また,金コロイドとの吸着系における検討を行う途上で,フェロセンボロン酸とPBCDとの超分子系がグルコースに対する高い電気化学応答をすることを見いだした.
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