研究概要 |
平成23年度は,前年度までに得られた結果を基に,以下の検討を行った. (1)スチリルピリジニウム(SP)色素とフェニルボロン酸修飾β-シクロデキストリン(PBCD)擬ロタキサン型蛍光プローブの高機能化:前年度までに合成した二官能性SP色素とPBCDとの擬ロタキサンを用い,多糖に対する蛍光応答を検討したところ,アミロース,グリコーゲン,キトサンの共存下で容量依存的な蛍光強度増大が得られ,これらの多糖の検出プローブとしての能力を持つことが明かとなった.また,四官能性および八官能性SPとPBCDとの擬ロタキサンは,グリコーゲンおよびガラクトマンナンに対する大きな蛍光増大が観察され,PBCD-SP超分子系の多糖に対する蛍光プローブとしての高いポテンシャルを明かにできた. (2)ベンゾクラウン(CR)誘導体とピレン修飾α-シクロデキストリン(PyαCD)の系の改良:CR-PyaCD擬ロタキサンのロタキサンへの変換について,水中でのフイスゲン反応を利用することで,収率は低いながらも単離することができたが,このロタキサンのアルカリ金属イオンへの応答は低いものであった.そこで,反応条件を種々検討した結果,水中ではなく,DMSO中で得られた反応物の中に,アルカリ金属イオンに対する高い応答を示すロタキサンが含まれていることがわかった.しかし,この精製が著しく困難で,単離するには至っていない. (3)フェロセン修飾シクロデキストリン(FcCD)-ボロン酸(PB)系の金表面への修飾:FcCDおよびPBにリポ酸を導入した化合物を用い,金表面に混合単分子膜を作成した.この単分子膜は,糖に対する電位応答を示す超分子型電気化学糖センサーとしての機能を持つことを確認した.FcCD-PBの金コロイド表面の修飾も試みたが,糖センサーとしての能力は確認できなかった.
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