本研究は、自己組織化により生成するGuanine(G)-4量体を単位とする構造体が作り出す、template金属イオンの一次元配列の機能について解明すること、および、新規磁性金属イオン配列を創成することを目的としている。初年度に引き続き、自己組織化によるGuonine-4量体の形成が報告されている塩基配列を用いた光誘起電子移動反応系を用いて、注入されたHoleの時間分解EPR測定を進めた。並行して、G塩基配列を比較的多く含む二重鎖DNA中のHoleについて得られている結果と対応させて検討を進めた。NMR法やCD法による観測結果から、4量体構造を形成するとされている系について時間分解ESR測定を進めた。4量体構造形成の特異性に起因すると考えられる確たる証左を得られず、実験結果の再現性も確立されていない。そこで、電子受容体の選択、緩衝液の調整条件などを含めて条件検討を進め、光誘起電子移動過程で生成するラジカル・ラジカル対のスペクトルの測定・解析から、種の磁気的パラメーターを抽出することを試みた。しかしながら、4量体構造形成と合理的に関連付けられる結果が得られていないので、解析手法も含めて検討を進めている。また、初年度に整備を進めた磁場効果測定のための観測系の改良を進め、ラジカル対のスピンダイナミクスについての研究手法として十全な情報が獲得できることを確認する作業を進めた。この手法を時間分解ESR法と相補的に用いることにより、4量体構造内のHoleの存在様式と機能との関連につい明らかにする研究として、最終年度の研究を展開する方向性が明らかにできた。
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