研究概要 |
水面上に互いに混ざり難い2種類の固体(例えば1-hexadecanol(C_<16>OH)と1H,1H,2H,2H-tetrahydrohen icosafluoro-1-dodecanol(FC_<12>OH))を静置した時に、固体からの不溶性単分子膜の自発的形成過程において表面張力の振動が起こるが、空気相と水相の間のvan der Waalsエネルギーと膜中での膜形成分子間相互作用の関わりの観点からこの現象を明らかにするのが本研究の目的である。23年度の実施計画は22年度までに得られた単分子膜の密度変化に伴う膜の混和性変化の情報に基づき、固体からの単分子膜の自発的展開に伴う表面張力の振動そのものについての精密で詳細な実験を行い、単分子膜形成の速度論的解析をすることであった。以下に当該年度の実績を記す。 (1)表面圧の振動と固体粒子サイズの関係 いかなる混合比でFC_<12> OHとC_<16>OHを水面上に散布しても、固体粒子から自発展開した単分子膜は2mN/m程度の低い表面圧でFC_<12>OHのみから成る凝縮膜となること明らかとなった。そして表面圧の振動(=表面張力の振動)は膜の混合状態の変化によるものではなく、散布した固体粒子のサイズと形状の分布に依存し、それは蒸気圧と粒径を関係づけるKelvin式で説明されるものであることがわかった。 (2)平衡拡張圧近傍におけるFC_<12>OHとC_<16>OHの吸着の活性化エネルギー アルカノール固体の粒径を揃え、速度論的測定を再現性よく行ったところ以下の吸着の活性化エネルギーエネルギーとエントロピーを得ることができた。FC_<12>OHの蒸気からの吸着:エネルギー=68.7kJ/mo1、エントロピー=-9.9kJ/mol/K;FC_<12>OHの固体からの吸着:エネルギー>106.9kJ/mol、エントロピー>61.7kJ/mol/K;C_<16>OHの固体からの吸着:エネルギー=89.7kJ/mol、エントロピー=24.2kJ/mol/K。 また平成22年度の成果を学会で発表したところ、観測された相転移の一つが新規なものであることが判明した。
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