研究概要 |
本研究は,ペプチドを模倣したC3対称のキラルなボウル型化合物を合成し,ホストーゲスト化学に新たなボウル型化合物のプラットホームを提供する。さらにキラルボウルを用いて分子コンテナ群へと展開し,ドラッグデリバリーシステムや分子フラスコなどの機能性物質群を構築することを目的とする。 本年度は,2-アミノフェノキシ酢酸の環状三量体がつくり出すボウル構造の特性を解明した。特に,溶液状態では水素結合によるフォールディングと側鎖の立体的効果からC3対称のボウル型構造を形成することを各種スペクトルから明らかにした。また,結晶状態では,アミド結合のひとつが反転して,四中心水素結合でボウル型構造を形成し,その内部にゲスト分子としてクロロホルムを包接することを明らかにし,学術論文に発表した。 さらに,新たなボウル型化合物として天然アミノ酸のロイシンとベンゼン環をもつβ-アミノ酸であるアントラニル酸と交互の縮合した環状ペプチドを合成した。これらの合成では,ロイシンのラセミ化が問題であったが,縮合試薬を検討して問題を解決し,光学活性な環状テトラおよびヘキサペプチドの合成法を確立し,分子力場計算による分子モデリングの結果と合わせて学会発表をした。今後,カプセル構造構築のため,これらのボウル型構造のリムとなるベンゼン環のニトロ化を検討していく。 また,コンテナ化に必要なボウルのリム部分への官能基の導入については,2-及び3-アミノフェノキシ酢酸の環状三量体で一つのカルボキシル基を有するボウル化合物の合成し,そのゲスト補足能について検討している。さらに,モノマーに導入したカルボキシル基をテンプレートと結合し,短工程のボウル構造ならびカプセル構築法を検討していく。
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