研究概要 |
本研究は,ペプチドを模倣したC3対称のキラルなボウル型化合物を合成し,ホスト-ゲスト化学に新たなボウル型化合物のモジュールを提供する。さちにキラルボウルを用いて分子コンテナ群へと展開し,ドラッグデリバリーシステムや分子フラスコなどの機能性物質群を構築することを目的とする。 本年度は,2-(3-アミノフェノキシ)アルカン酸の環状三量体がつくり出すボウル構造がアセチルコリンを包接することを見出した。神経伝達物質であるカチオン性のアセチルコリンは,生体内の結合サイトにおいてアミノ酸側鎖の芳香族基との間にカチオン-π相互作用が働いており,我々の環状三量体はそのモデル化合物として,また過剰なアセチルコリンを捕捉する薬剤への応用が期待でき,次年度は水溶液中での包接能を調べる。また,包接の機構について研究し,対アニオンとの水素結合も重要であり,包接の過程でホストの配座が変化するアロステリック効果も確認できた。このよう効果は酵素モデルとして興味深い。さらに,この環状三量体はキラルなボウル型化合物であり,ラセミ体の第四級アンモニウムの立体選択的会合も確認できた。今後キラル識別を利用した機能性ホスト分子としての検討をすすめる。 また,ホストの合成法も改善し,2-(3-アミノフェノキシ)アルカン酸からの直接1段階縮合法で環状三量体が効率よく得られた,同時,コンテナ化に必要なボウルのリム部分へのエステル官能基の導入した環状三量体の合成も可能になった。次年度はカプセル化についての研究を推進する。
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