研究概要 |
種々の指令に応じて,analyte感応性をスイッチングできる発光色素の構築を目標に,21年度は1-3の項目について検討した. 1. 発光色素の構築 1-1. 8-アミノキノリンのアミノ基をトリフルオロアセチル基で機能化し,センサー1を合成した.センサー1は塩基(例えばDBU)を添加することでアミド部位のプロトンを解離させ,アミデート型となり,アミド型とアミデート型の発光応答特性を観測することが可能である. 1-2. 8段階の合成ステップを経て,ビス(ピコリル)アミノレセプターを持つ2,3-アントラセンジカルボキシイミド誘導体,センサー2を構築した. 2. 基礎的光物理特性の観測 2-1. センサー1は350nm付近の紫外領域に吸収帯を持ち,それ自身はほぼ無蛍光性であることを確認した. 2-2. センサー2はビス(ピコリル)アミノ基からアントラセンカルボキシイミドクロモフォアへの光誘起電子移動により,蛍光はほとんど観測されないことを確認した. 3. センサーのanalyte応答性の観測およびスイッチングの検討 3-1. センサー1はアミド型で金属イオン,特に銅イオンやアルミニウムイオンがanalyteとして存在するときに,analyteがない場合に比べて顕著な蛍光強度を示した.一方,センサー1のアミデート型では,亜鉛イオンの添加により150倍程度の蛍光増大を示した.センサー1は当初目的とした,アミドーアミデート平衡に基づきanalyte感応性をスイッチングできるインテリジェントセンサーとして作動する可能性を確認した.このスイッチングの機構について,引き続き解明する予定である. 3-2. センサー2は,亜鉛イオンをanalyteとして添加した際に,顕著な蛍光増大を示すことを確認した.今後このセンサー2は今後,ルミノール類似のヒドラジド骨格へ誘導し,化学発光センサーへ展開する予定であるが,センサー2の亜鉛イオンに対する応答により,化学発光センサーの動作を制御する基礎データを得ることができた. 3-3. 3-フルオロアセチルアミノフタルイミド,センサー3がI^-とLi^+のペアに選択的応答をすることについて,応答のメカニズムを検討し,I^-の光イオン化がトリガーとなってセンサー3のアミドプロトンが脱離し,最終的に生成したアミデートイオンが選択的にLi^+と相互作用することを見いだした.
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