研究概要 |
外部刺激への感応性を制御できる新しい蛍光センサーを構築すること,および新規化学発光プローブを構築することを目的とし以下の点について検討を行った. 1.アントラセン2,3-ジカルボン酸から誘導される蛍光および,化学発光プローブの構築 (1)アントラセン2,3-ジカルボキシイミドフルオロフォアにジピコリルアミノレセプターを導入し,新しい光誘起電子移動(PET)プローブ1を合成した.従来法を改良し,収率を向上させることができた. (2)プローブ1をヒドラジンと反応させることにより,ルミノール類似のフタラジンジオン構造へ導き,ジピコリルアミノレセプターを有する初めての化学発光プローブ2を構築した.化学発光プローブ2はジメチルスルポキシド中,塩基との反応で化学発光を示すことを確認した. (3)蛍光プローブ1と化学発光プローブ2の金属イオンに対する応答を検討した.プローブ1は亜鉛イオンの添加で蛍光発光の増大が見られたのに対し,化学発光プローブでは亜鉛イオンの添加で化学発光の消光が観測され,蛍光と化学発光で金属イオンの効果が異なることを見いだした. 2.アミノキノリンを用いた蛍光プローブの金属イオン応答スイッチング (1)8-アミノキノリンのアミノ基をトリフルオロアセトアミドとして,アミドプロトンの解離に伴うアミドーアミダート平衡を利用して蛍光応答のスイッチングを前年度に引き続き検討した. (2)アミド体はほとんど無蛍光であるが,アルミニウムイオンの添加により最も効果的に蛍光強度が増大し,青色の蛍光を示すようになることを新たに見いだした.このアミド体に酸を作用させると同様な蛍光増大が見られることから,アルミニウムイオンはルイス酸として作用し,蛍光特性を変化させると考えられる. (3)一方,アミダート体は銅イオンの添加に対して緑色蛍光を示し,プローブ3はアミドプロトンの解離平衡によってanalyte感応性を切り替え,蛍光波長と強度を変化させた.銅イオンの効果についてはさらに機構の解明を行う予定である.
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