研究概要 |
当該年度は,以下の項目で成果を得た。 1. 蛍光性含ホウ素分子レセプターの合成と分子認識能 ホウ素の化学的性質を利用した分子組織体研究の一環として,半球分子であるレゾルシン[4]アレーンキャビタンドに着目し,含ホウ素化をおこなった。その結果,蛍光性アリールボランの導入に成功し,その3次元構造体は紫外光励起で発光した。興味深いことに,当該分子の空孔内に相互作用可能な有機カチオン類を添加したところ,その発光特性が変化する現象を見出した。当該挙動はNOESYを含む各種機器分析から解析され,新しい蛍光性レセプターとしての機能発現が示唆された。 2. 両親媒性イソチオウロニウム型ポリチオフェンの機能開発 両親媒性π共役ポリマーは,バルク環境や化学刺激に応答した高次構造をとりえるので,その動的機能と光学特性との協働性を探求することは機能開拓に観点から意義深い。種々の誘導体化が可能なカチオン性イソチオウロニウム基をペンダント部位にもつポリチオフェンを新規に合成した(M_n=5.68×10^5, PDI=1.4)。MES緩衝溶液中(pH=5.5)中でアニオン類添加による刺激応答性を調べたところ,フィチン酸イオンの添加は,他のアニオンよりも効果的な蛍光応答を示すことがわかった。その検出限界は83nM算出され,フィチン酸イオンを水溶液中で高感度にモニターできることかわかった。また追合成したポリマー(M_n=5.40×10^5, PDI=1.5)と塩化金酸を水溶液中で混合させたところ,還元剤がない条件でも金の成長が観測された。TEM, EDX, FE-SEMから当該ポリマーが表面被覆した金プレート体の合成に成功した。
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