研究概要 |
当該年度は,以下の項目で成果を得た。 1.刺激応答性を示すボロン酸エステルソフト粒子: 含ホウ素動的共有結合に着目したソフト粒子の構築をおこなった。ベンゼン-1,4-ジボロン酸と1,2,4,5-テトラヒドロキシベンゼンとの逐次的ボロン酸エステル化反応を検討したところ,適切な自己組織化条件を満たすことで階層構造をもつ球状粒子が形成した。当該粒子のTHF分散液に複数の単糖誘導体を添加し,その応答挙動を調査した。その結果,興味深いことに,フェニル-β-D-ガラクトピラノシドを添加した系においてのみ,球状構造から繊維状構造への形態変化が観察され,その応答挙動を明らかにした。 2.金ナノクラスター担持ボロン酸エステル自律組織体の調製: ベンゼン-1,4-ジボロン酸とペンタエリスリトールをTHFに加え,室温で48時間静置したところ,花弁状の粒子の生成が確認された。その機能化の一環として,析出還元法による金ナノクラスターの担持をおこなった結果,粒径が2.7nmの金ナノクラスターが固定化された。得られた複合体は触媒機能を示すに至った。 3.蛍光性ボロネートヒドロゲルの調製: 含ホウ素分子系の機能化研究の一環として,ポリビニルアルコール(PVA)をマトリックスに用いたボロネートヒドロゲルの調製をおこなった。当該ゲルフィルムは,PVA,架橋剤としてのベンゼン-1,4-ジボロン酸およびジヒドロキシボリル化したN-ダンシルジエチレントリアミンのDMSO溶液を室温下で混合キャストすることにより調製された。溶媒を水に交換して得られたヒドロゲルフィルムは,紫外光照射(λex=340nm)下において緑色の蛍光(λem=511nm)を示し,銅イオンとの共存下,選択的な蛍光消光が観測された。
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