ポリペプチドは、側鎖の分子種を上手に選択すると主鎖の剛直ならせん構造の形成に伴って強誘電性コレステリック液晶相の発現や高い第二高調波(SHG)の発信などが可能である。本研究の目的は、ポリペプチドの側鎖に機能性分子団を導入し、同一分子内に電気磁気(光学)相互作用を非共役的に結合させた超分子らせん集合体を開拓することにある。その柱の1つが、(1)ポリペプチドらせんを利用した高効率EL材料の開拓である。我々は、光伝導性カルバゾール(Cz)基を導入したポリグルタメート(PCELG)を用いてEL素子を作成したところ、スピンコート膜作成時に利用した有機溶媒の種類によって発光効率が20倍変化し、その最大発光効率はポリ(N-ビニルカルバゾール)に匹敵することを見出した。分光学的な測定結果は、ポリペプチドのらせん構造が溶媒の種類によって大きく異なり、側鎖Czの積層配列に強く影響していることを示している。我々は、ポリペプチドらせんの秩序構造形成に伴う側鎖Cz基の積層配列が電荷の輸送特性や励起子の拡散効率に重要な役割を担っていることを指摘した。 もう一つの柱は、(2)らせんスピン秩序を有する強誘電性ポリグルタメートの構築と交差相関物性の開拓である。ライオトロピック液晶相の発現するポリペプチド鎖を使って高分子の巨視的な配向を電場によって制御し、らせん磁気秩序の反転(反強磁性⇔強磁性転移)と誘電特性を同時に制御することができれば、有機磁性材料の新たな分子設計指針が得られるものと期待される。本年度、我々は安定な有機ラジカルTEMPOをポリグルタメートの側鎖に導入した化合物(PTPOLG)の合成に成功し、ニトロキシラジカルがらせん状に配列していることを見出した。さらにPTPOLG薄膜の静磁化率の測定からニトロキシラジカル間に反強磁性的相互作用(ワイス温度θ=-3K)をすることを見出した。
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