1.ポリオレフィンをマトリックス樹脂とするセルロースナノファイバー(CNF)によるポリマー系ナノコンポジット調製法の開発と物性改良:平成23年度交付申請書の計画に沿って検討し、実用的・効果的なポリオレフィンに対するCNF補強法をまとめた。プラスチックのCNFを用いる強化は、多くの場合、CNF添加量10%以上で行われている。本研究では1%以下など低濃度添加を検討し、その妥当性を調べた。(1)0.05%というごく低濃度CNF水スラリーの超急速凍結-凍結乾燥物FE-SEM像として、CNFの濃密な三次元配置を見出した。(2)CNF添加量を10%にすると、圧縮強度特性の向上は僅かに認められるが、衝撃強度は低減する。CNFの再凝集とマトリックス樹脂との接着性の悪さが原因として考えられた。(3)CNF添加量を多くすると添加ナノコンポジットの耐水性が低下する。(4)0.5%以下のCNF添加系に対し種々反響があるが、その中でLiイオン電池用隔膜(セパレーター)としての活用に関する共同研究の提案があった。JSTのFS探索タイプでの検討の結果、CNF強化によりポリオレフィンの耐熱性が向上し、熱軟化点以上での形体保持性が満足すべきものであったことが評価された。企業により、セパレーター製造法を連続法に変える検討へと進んでいる。(5)セルロース種の選択の重要性もデータ化された。 2。ポリオール液化木材樹脂をマトリックス樹脂とするクレイ、あるいはCNFによるポリマー系ナノコンポジット調製法の開発と物性改良:(1)バイオマス・有機化クレイ混合物へのカプロラクトン、ラクチド開環重合手法によるコンポジット化の検討、(2)CNFの低濃度ブレンド物をポリオールとするポリウレタン成形物、特に発泡体の調製の検討、(3)バイオマスのポリオール液化物へのCNFのブレンド物の粘度低減法の検討それぞれで成果を得た。
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