研究課題/領域番号 |
21550149
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
牧野 正和 静岡県立大学, 環境科学研究所, 准教授 (50238888)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | PCB / 難分解性有機塩素化物 / リスク・運命予測 / 定温ガスクロマトグラフィー / キャピラリーカラム保持容量 / 置換位置異性体 / エンタルピー・エントロピー補償 / 等溶出温度 |
研究概要 |
今年度、定温ガスクロマトグラフィーにより六塩素化ビフェニルおよび三塩素化ビフェニルの保持容量を悉皆的に測定し、van’t Hoff プロットに基づいてカルボラン系キャピラリーカラム固定液層に対する吸・脱着エンタルピー(δ(ΔH))、同エントロピー(δ(ΔS))を算出することに成功した。また、本系における 保持容量の自然対数値と温度との逆数の間に厳密な等溶出温度(IET)が存在するかどうか、およびδ(ΔH) と δ(ΔS) の間に補償関係(EEC)が成立するかを検証するため、昨年度確立した統計的評価法を適用した。以下に実績を記すが、紙面の都合上六塩素化異性体に関する報告に限る。(1) 各異性体の van’t Hoff プロットが一点(等溶出温度)に収束するかどうかを調査した結果、今回の測定温度範囲では明確な一点収束は観られなかった。(2) ΔGThm と δ(ΔH) とのプロットより両物理量に線形関係が成立するかどうか確認した結果、極めて高い線形関係(r2 = 0.975)が成立することがわかった。また、(3) (2)のプロットより算出される温度(Tc = 981 K)と、δ(ΔH) vs. δ(ΔS) プロットより得られる補償温度(Tc' = 932 K)と比較した結果、50 K 程度の差が生じているが、概ね一致していると判断された。(4) 分散分析に基づいて (1) のプロットが測定温度域以外で一点収束する統計的可能性を調査した結果、その可能性は極めて高い(MScon / MSnoncon = 1507 >> 7.333)が、測定誤差も無視できない(MSnoncon / MSe = 511 >> 1.686)ことが分った。以上の結果、本系では、明確な IET は統計誤差のため確定できないが、EEC は成立しているとみなせることが分った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キャリアーガスであるHeの供給不足に直面している。このため、計画されていた六塩素化ビフェニル(未測定21種)と三塩素化ビフェニル(24種)の測定の進捗が危惧された。しかし、前々年度より取り組み成功している測定プロトコルの改定に基づくキャリアーガスの省力化によりに、概ね計画通り測定を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は研究計画の変更を予定していない。未測定の塩素化ビフェニル(一、二、七、八、九、そして十)を測定することで悉皆的調査が完了する。なお、七から十塩素化体のTiso-GC測定時間が18時間程度にまでに及ぶ可能性がある。保持時間が長時間の場合、ピークのブロード化が著しいこと等、原理的な課題が生じているが、従来の観測精度保持と測定温度種の減少とを検証しながらδ(ΔH)、δ(ΔS) 値の評価を進める。一方、キャリアーガスの不足に対応するため、これを窒素あるいは水素へ変更し、かつ検出器の変更も併せて検討する。
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