前年度までに行ったシアリルラクトース合成方法確立、および発光部位であるシロールをコアに有するカルボシランデンドリマー構造と検出感度の関連性の研究成果を受け、本年度は、実際に鳥インフルエンザウイルスの検出薬となりうる3'-シアリルラクトース担持シロールデンドリマーの合成を行った。これまでの研究実績から、最も容易に合成できる6分岐(6個のシアリルラクトースを担持させた)シロールデンドリマーを標的化合物とした。 まず、シアリルラクトースをデンドリマーへ導入可能にするため、アグリコン部位にペンテニル化、シオアセチル化をして官能基化した。シアリルラクトースの末端官能基化の方法は、これまでに行ったラクトース、グロボ三糖などの官能基化の方法と同様の手法にて合成することができた。さらに、6分岐型シロールデンドリマーの末端臭素化物と反応させることにより、目的とする鳥インフルエンザウイルスの検出薬となりうる化合物の合成に成功した。 鳥インフルエンザウイルスは、強毒性であるため当該ウイル不を取り扱える医療機関は国内には極めて少なく、実際の鳥インフルエンザウイルスを使っての検出試験は現在交渉中である。しかし、ヒトインフルエンザウイルスを使った本検出薬での検出試験では、陽性は示さなかった。これは、文献的にも知られているヒトインフルエンザウイルスは、今回合成したシアリルラクトースの異性体である6'-シアリルラクトースを認識することと一致する。今回合成した検出薬が、鳥インフルエンザウイルスを検出できる可能性が高いと期待している。
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