研究課題
卵白タンパク質オボアルブミン(OVA)は熱凝集にともないナノサイズの線維状あるいは球状の凝集体を形成するが、その機構は脳神経疾患に関与するアミロイド線維の機構に類似することが指摘されている。OVAは免疫誘導における抗原モデル蛋白質に応用されており、その凝集機構の解明は抗原の細胞移行効率化技術開発において重要である。そこで本研究ではOVAの熱凝集の分子機構を遺伝子組換え技術と合成ペプチド断片を用いて調査した。まず、OVAのアミノ酸配列をβ凝集予測アルゴリズムにより解析したところ、helixB、strand3A、strand4-5Bに高いβ凝集傾向が予測された。また、これらの領域に対応するペプチドは、熱処理によりアミロイド様線維を形成することが、電子顕微鏡やFTIRにより確認された。次にこれらの領域のValをAlaに置換したOVAの変異体を合成し、それぞれ線維形態能への影響を確認すると、helix B領域における変異体においてのみ線維形成が抑制されることが判った。さらに、OVAの線維に対してプロテアーゼで処理して揺らぎを有する部位をマッピングすると、N末端のヘリックス領域は切断されておらず、線維形成における核として機能することが確認された。以上の結果よりOVAの線維形成において、helix B領域が熱変性にともなってα-β転移して会合し、線維核となることが示唆された。この知見をもとに今後は塩基性ペプチドによって誘起されるOVAの微粒子化機構について調査する。
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The Journal of Biological Chemistry
巻: 286 ページ: 5884-5894
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