研究概要 |
ペプチドセグメントを縮合するライゲーション法による種々の長鎖ペプチド合成法が報告されている.これらには共通の合成ブロックとしてペプチドチオエステルが用いられている.これまでにカルボキシ末端にシテイニルプロリルエステル(CPE)基を有するペプチドが自発的にペプチドチオエステルに変換することを見出している.本研究ではエステル基を有さない自動活性化型ペプチドを用いる新規ライゲーション法の開発を目的としてる. 今年度は,あるモデルペプチドのカルボキシ末端にCys-Proに続いた3残基のランダムな配列を有するペプチドライブラリーを構築し,Cys-ペプチドとのライゲーション反応を指標として,反応性配列の探索を行った.その結果,Cys-Pro-CysあるいはCys-Pro-Ser配列を有するペプチドが,効率は非常に悪いながら,中性条件下でCys-ペプチドと反応し,ライゲーションが進行することを見出した.さらに,反応条件の検討を行ったところ,0.1M塩酸あるいはヘプタフルオロ酪酸中で加熱することにより,20%程度の収率でcyclo(-Cys-Pro-)の側鎖チオール基上にペプチドチオエステルが形成されることを見出した.この反応は2回の連続したN-Sアシル基転位反応と引き続くアミノ基とチオエステルの反応により,CPE基と類似の反応機構によって,ジケトピペラジンチオエステルが形成されるものと推測される.ここで見出した配列は蛋白質性の構造のみからなり,大腸菌などを用いて調製される組換え蛋白質に適用できると考えられ,その応用が期待される.
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