本研究課題では遺伝子ベクターへの応用を目的としてDNAコンパクションセグメントを有する糖質高分子の合成を進めている。最終年度は可逆的付加開裂型連鎖移動(RAFT)法によるブロックコポリマーの合成とそのポリプレックス形成能および遺伝子導入効率評価を行った。 (1)RFAT法によるブロック共重合体の合成はじめにRAFT用連鎖移動剤CPADBを用いてManEMAを重合し、重合度33のマクロRAFT剤を合成した。このマクロRAFT剤を用いてDMAEMAをpHを5に調整した水溶液中で重合することによりManEMAセグメント長が一定でDMAEMAセグメント長を系統的に変化させたブロックポリマーの合成に成功した。さらにRAFT剤としてCPADBを用いてManEMAとDMAEMAの統計ポリマーおよびDMAEMAのホモポリマーも合成した。 (2)ポリプレック形成能評価合成したManEMAとDMAEMAのブロックポリマー、統計ポリマーおよびDMAEMAのホモポリマーのポリプレックス形成能をプラスミドDNAを用いたゲルシフトアッセイにより評価した。その結果、F_<ManEMA><0.15の条件下でポリプレックスの形成が認められた。またポリマーのミクロ構造(ブロック・統計)はポリプレックス形成能に影響しないことが分かった。 (3)遺伝子導入効率評価合成したManEMAとDMAEMAのブロックポリマー、統計ポリマーおよびDMAEMAのホモポリマーのHeLa細胞への遺伝子導入効率をpEGFP-N1を用いたGFP発現効率から評価した。研究開始時に期待されていたManEMAによる細胞毒性低減効果は、RAFT重合で合成できる分子量範囲では、認められなかった。また遺伝子導入効率はミクロ構造の影響を受け、ブロックポリマーでは全く遺伝子導入されないのに対し、統計ポリマーでは市販のトランスフェクション試薬であるSuperFect^<TM>に匹敵する遺伝子導入効率を示した。
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