研究概要 |
緑膿菌は鉄枯渇状態に陥ると、ヘムを鉄源として捕獲するシステム、heme aquisition system (has)関連遺伝子を発現させる。その中で、HasAは細胞外へと分泌され宿主に存在する遊離のヘム、あるいは、ヘムグロビンなどからヘムを捕獲し、膜上に存在する受容体、HasRへとヘムを渡す。HasRを介して細胞内に運ばれたヘムはヘムオキシゲナーゼによって分解される過程で鉄が遊離する。今年度までの研究で、 (1)緑膿菌由来のHasAは、HisとTyrを3価のヘム鉄に配位させることでヘムを捕まえていること (2)HisよりもTyrが鉄に配位する速度が速いこと (3)鉄を有さなくても平たい分子であれば、疎水性相互作用を介してヘムポケットに結合できること (4)ヘモグロビンからHasAへのヘムの移動速度は、ヘモグロビンからのヘムの解離速度とほぼ同じであること がわかった。以上より、HasAは、宿主のヘムタンパクから遊離したヘムを、まず、疎水性相互作用でヘムポケットに取り込み、次に、Tyr, Hisの順で鉄との間に配位結合を形成することでヘムの捕獲を行っているのではないかと考えた。現在、このプロセスの中間体の構造解析に取り組んでいる。こうした知見は、Hasを阻害することで抗菌作用を持たせるような薬剤の探索にも繋がるのではないかと期待している。
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