研究概要 |
研究代表者はこれまでに、金属配位能を有する非天然アミノ酸として、5'-アミノ-2,2'-ビピリジン-5-カルボン酸を3残基導入したペプチドの分子設計を考案しており、そのルテニウム-ペプチド錯体を光機能性人工タンパク質として報告し、「ペプチド折り紙」と名付けられている。今年度は、この非天然アミノ酸を導入したペプチド配位子を利用した、いくつかの機能性金属錯体創製について成果を挙げた。第一に、ペプチド鎖に導入するアミノ酸の種類、位置を自在に変えられることから、電子ドナー部位としてチロシン残基を、電子アクセプター部位としてビオローゲンを導入したペプチド鎖を配位子とするルテニウムトリス(ビピリジン)型錯体を合成した。このような電子ドナー-クロモフォア(ルテニウム錯体)-電子アクセプター三元錯体は、光誘起電子移動反応により電荷分離状態を形成することから、その寿命を時間分解分光法により測定した。第二に、ペプチド折り紙により得られる金属錯体は、複数の立体異性体の混合物として得られることが多いが、二つのビピリジン型非天然アミノ酸を接続する部分にL-プロリンを導入することで、金属錯体の立体化学を制御できることを見出した。第三に、ビピリジン型非天然アミノ酸とヒスチジン残基を含むペプチドを合成し、金属-ビピリジン錯体と金属-イミダゾール錯体の二核錯体を合成した。ここでも金属錯体の立体制御が重要であるが、本研究ではトリエタノールアミンに3分子のペプチド鎖をエステル結合で接続し、金属トリス(ビピリジン)型錯体の異性体であるfac体を選択的に得ることに成功した。さらにこの金属錯体がテンプレートとなって3残基のヒスチジン側鎖に金属イオンが配位することを見出した。
|