(1) 新規クロスリンカーの合成(代表者):新規クロスリンカーは、DNA結合部位(psoralen)、転写因子結合部位(O^<6->benzylguanine)、両者をつなぐスペーサー(PEG)の3つの部位からなる。前年度確立したモデル化合物の合成ルートをもとに、市販のPEGスペーサー(PEG3、PEG5、PEG11)を用いることで、長さの異なるクロスリンカーを合成した。本研究はSNAP-tag(転写因子に結合している)とDNAを架橋するのが目的であるが、最適な橋の長さは事前には分からず、また転写因子ごとに異なると考えられる。長さの異なるクロスリンカーを揃えれば、状況に応じて最適な長さの分子を使うことができる。3種類のPEGスペーサーを用いてクロスリンカーを合成できたことは、さらに長さの異なるクロスリンカーを合成できることを意味している。 (2) クロスリンカーとDNAとの光架橋反応(代表者、分担者):合成したクロスリンカーと短い2本鎖DNA(10~20塩基対)を混合し光照射したのち、HPLCにて反応の進行を分析した。これは、光照射の条件を決めるために重要な実験である。本年度は、HPLCの分析条件を最適化するための検討をおこなったが、最適化は十分でなく、引き続き来年度も実験をおこなう。合成したクロスリンカーと比較的長い2本鎖DNA(500塩基対程度)との架橋反応の解析も検討中である。 (3) クロスリンカーと融合タンパクの架橋反応(分担者):エストロゲン受容体(ER)にSNAP-tagを含む3種類のタグを付けた融合タンパク質と、複数のクロスリンカーとの架橋反応をおこなった。クロスリンカーの濃度の増加にともない、高分子量の複合体が生成することがわかった。得られた複合体の構造を詳細に調べることによって、架橋反応に関する重要な知見が得られる可能性がある。
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