研究概要 |
本年度は(1)4-メチルカテコール(4-MC)存在下、鉄アセチルアセトンを高温熱分解し、生成したマグネタイトナノ粒子表面の4-MC分子を用いて抗体やリガンド分子を置換する方法、(2)ビニルピロリドンとメタクリル酸との共重合体(PVPMA)存在下、鉄ペンタカルボニルを高温熱分解し、そのカルボキシル基を用いて抗体やリガンド分子を置換する方法、これら2つの方法を用いてマクロファージや泡沫化細胞への指向性を有する磁性ナノ粒子の調製とその評価を行った。 初めに、(1)の方法について紹介する。マクロファージにはデクチン-1という(1→3)-β-Dグルカンのレセプターが存在するため、(1→3)-β-Dグルカンはリガンド分子として機能することが期待される。従って、(1→3)-β-Dグルカンを表面に有する磁性ナノ粒子を合成した。また、対照としてマルトヘプタオースを有する磁性ナノ粒子も合成しRAW細胞(マウス白血球細胞)への取込挙動を調べたところ、有意な差を認めることができた。また、(1→3)-β-Dグルカン置換磁性ナノ粒子を用いてRAW細胞と3T3細胞(マウス線維芽細胞)への取込挙動でも有意な差を認めることができた。 一方、(2)の方法で合成したPVPMA被覆磁性ナノ粒子では抗体の結合条件を検討した。心筋症発症の予測マーカーの可能性があるタンパク質pentraxin 3(PTX3)に対する抗体は非常に高価なため、まず、乳がん及び胃がん細胞に結合するハーセプチンを用いて抗体導入条件等の検討を行った。対照としてB細胞に結合するリツキサンを導入した粒子も調製し、GLM細胞(ヒト乳がん細胞,HER2発現あり)と3T3細胞(マウス繊維芽細胞,HER2発現なし)を用いて取込挙動に明確な違いが認められることを確認した。最後に、これらの実験条件を用いてPVPMA被覆磁性ナノ粒子に抗PTX3抗体を結合し、泡沫化細胞への指向性を有することが期待される磁性ナノ粒子を調製した。
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