バルクヘテロ接合型と呼ばれる有機薄膜太陽電池素子では、p-n界面が立体的に入り組んだ構造を持つため、より多くの電荷の発生が可能となると考えられている。本研究課題では、バルクヘテロ接合型太陽電池の更なる高効率化を目的として、金属と有機層界面のナノ構造化の検討を行っている。本年度の研究では、昨年度のナノピラー型のモールドによるナノ構造化に続いて、ラインスペース型のモールドを使ったナノ構造化を行い、デバイス化後の機能についても詳しくしらべた。まず、アノード電極表面をナノ構造化したデバイスで実験を行ったところ、開放電圧はフラット型のデバイスとほぼ同等であったが、短絡電流が約2/3ほどに減少してしまい、ナノ構造化の効果には結びつかなかった。PEDOT:PSSは抵抗が高い反面、金属表面のような励起子の消光は起こりにくいために、そナノ構造化のメリットも大きいと考えられたが、我々の系では、ナノ構造化による効果を得ることは出来なかった。 続いて、カソード側のナノ構造化を行ったところ、こちらは開放電圧、短絡電流ともに、フラット型デバイスとほぼ同等の値を示したが、フィルファクターが低下したため、やはりナノ構造化による機能向上にはつながらなかった。しかし、スピンコートやアニールなどの条件をすべてフラット型デバイスに最適化した上での比較だったために、ナノ構造デバイスに向けた最適化を検討することで、今後、効率が向上することは十分考えられる。特にアニールは膜中での高分子鎖の結晶状態に大きく影響を与え、高分子鎖の結晶状態はフィルファクターに大いに影響することが考えられる。デバイスのナノ構造化について、今後の研究指針に大いなる知見が得られた今年度の研究の意義は大きい。
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